その手をぎゅっと掴めたら。
今日ほどに第三者の登場を待ち侘びたことないな。誰か、誰かこの空気を変えて欲しい。
「そんな身構えなくても…北斗にもよく言われるの。君は押しが強いって。ごめんね、こういう性格だから許して」
「はい」
1つしか歳は変わらないけど、生徒会長の堂々とした振る舞いとハキハキとした話し方は随分と大人びて映る。私が子供っぽいだけかな。
生徒会長と対峙すると己がちっぽけな人間に思えてどうしようもない…。
「タメ口でもいいのよ?それでね、あなたに言いたいことがあるの」
一度途切れたその言葉の続きを聞かなくても分かる。
北斗にあなたは吊り合わない。
北斗と別れて。
そう言われても、首を振ろう。
どんなに強い口調で、何度も言われようとも認めてはならない、頷いてはならない。
肩に力を入れた私に、生徒会長は笑いかけてくれた。
美しいだけでなく哀しみを称えた微笑みだ。
「ありがとう、北斗を暗闇から連れ出してくれて」
「え?」
「昨日たまたま会って北斗の口からさ。これから"デート"だから邪魔するな。だって。信じられないよ」
そりゃぁ信じられないよね。
こんな私とデートなんてね…。自分でも昨日のことは夢だったんじゃないかって、朝起きて一番に思ったくらいだし。