その手をぎゅっと掴めたら。
すぐに駆け寄ってきた雪ちゃんと早紀ちゃんは心配そうに私を見た。
「2人はどうだった?」
「98点。1問ミスった」
早紀ちゃんが溜息をついた。
「でも93点らしいし?問題ないよ」
机の上に置いたままの私の答案用紙を見て凛ちゃんは口の端を上げて笑った。
「ごめんなさい。確かに賭けには負けたけれど、葉山くんとは別れたくない。ごめんなさい」
不穏な空気を察したクラスメートの視線を集めたが、構わず頭を下げる。
「凛ちゃん、雪ちゃん、早紀ちゃん。本当にごめんなさい」
「はあ?負けたんだから、約束を守れよ。バカ」
「……勝手でごめんなさい、それでも彼と別れることはできません」
凛ちゃんはきっと凄い形相をしているだろう。顔を上げられずに臆病になっている己が情けなくて涙が出そうだ。
どうしよう。
もう、逃げ出したい。
「……あのさ、3対1で卑怯だと思わないの?」
聞こえた落ち着いた声の主は、朝と同じように私の肩を優しく叩いた。