その手をぎゅっと掴めたら。

「雪もなんか言ってやりなよ」

凛ちゃんの声に手鏡から視線を上げた雪ちゃんは私をちらりと見てから手元のメイク道具を片付け始めた。


「とりあえず明日、モテ王子に声をかけて相手の反応を伺ってみないものにはなんも言えないよ」

「まぁやっぱごめん、ってなるのがオチだよね」


明日が見えているかのように凛ちゃんは確信している。まぁ、そうなるでしょうけど。


「うんうん。昨日も他校のめちゃくちゃ美人な子に告白されて断ってたって噂だしさー」

「美人にも揺らがないよねー」

「でもさ、モテ王子はなに考えてるか全然分からないよね。クラスの男子ともほとんど喋らないし」

「そこがいいんじゃん。一匹狼で、クールで、全て完璧でさ」


凛ちゃんと早紀ちゃんがモテ王子の私生活をあれこれ予想している間、冷めたコーヒーを飲みながらそっと溜息をつく。

私はどうすればいいの?

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