その手をぎゅっと掴めたら。
重症ではないけれど病院に居るという現実だけで、気持ちが落ち込む。
何度か入退院を繰り返した祖父が早く帰りたいと常々、口にしていたことを思い出す。
こんな時、葉山くんなら何を思うのだろう。
話したい。
そう思うものの、
手を振り払われた今朝の光景を思い出してしまい、尻込みする。
あれ?私、彼女だよね?
付き合っているのであれば、手くらい繋いでもおかしくない。もしかして私たちは一生、手を繋げない関係なのかな。
あの時、葉山くんの表情から故意でなく反射的に振り払われたのだと察した。
彼の本能が、私を拒絶したのだ。
「…私、嫌われてる?」
落ち込みそうな心を否定するために何度が首を振ると、目眩がした。
でも、と言い訳を連ねる。
私が階段から落ちそうになった時、葉山くんは手を伸ばしてくれた。咄嗟に、私を助けようとしてくれたじゃないか。
階段を下りてきたということは、私を探してくれていたのかな。
「心配かけたよね…」
今朝のことは私が突然、触れようとしたから驚いただけだ。きっと、それだけなんだ。