その手をぎゅっと掴めたら。
するりと、傘から手が離れる。
「別れよう…」
地面に落下した傘を拾う気にもなれず、葉山くんの言葉を反復する。
「…なんで、」
訳が分からない。
冷たい雨が降り注ぐ。
「やっぱり付き合うとか、面倒だなって思った」
先程よりもこちらに傘を傾けた葉山くんの髪の毛が濡れて、水が頬を伝う。
「違う」
今、自分がどんな状況にいるか追いつけない頭で、それでも反射的に答えた。
「葉山くんは面倒という理由で、こんなことは言わない。もっと、他の理由があるのでしょう?」
「他の理由?ないけど」
突き放すような物言いに、ムキになって言い返す。
「誤魔化さないで!」
「それじゃぁ、君のことが嫌いになったと言えばいいの?」
残酷な言葉を投下した彼は、薄ら笑いを浮かべた。