その手をぎゅっと掴めたら。
学校を休んできてくれた亜夜はお見舞いのゼリーを広げた。
「好きなの食べな」
「朝ご飯食べたよ」
「足りないでしょ」
スプーンを無理矢理に持たされて苦笑する。
でも亜夜が居てくれて良かった。ひとりになってしまえば彼のことしか考えられないだろうから。
「あ、亜夜。お願いがあるの」
コンビニの袋から取り出されたコーヒー牛乳を見てハッとする。
「なに?」
「金曜日にお店の扉に張り紙して欲しいの。青山さんが来る日だから。さすがに金曜日までには退院できないと思うんだよね」
「まだ連絡先を交換してないの?」
「一応、店主と常連さんだよ?友達じゃないんだし」
良き相談相手ではあるけれど。
「そう言ってもさ、青山さん一人のためにお店を開けているくらいだよ?…まぁ、いいわ。金曜日、私がお店に居るよ。缶コーヒーでもご馳走するわ」
「ありがとう。でも缶コーヒーって、ウケる」
毎週金曜日は部活の日でいつも帰りが遅い亜夜は「特別だよ」と、快く引き受けてくれた。
青山さんが海外に旅立つ12月まで、もう2ヶ月を切っている。早く治して、少しでも腕を上げないとな。