その手をぎゅっと掴めたら。
ぼんやりと天井を眺める。
なんでだろう。
ドラマの主人公は失恋をしたら、部屋のものをぐちゃぐちゃにしたりとか、大声で叫んでいるイメージだけれど、本調子でないせいかぼんやりとしてしまう。
そりゃぁ別れを切り出された直後は激しく動揺したけれど、今は静かにショックを受けている。
私の気持ちを代弁するかのように土砂降りの雨は午後から小雨になっていた。
やっぱりな。って正直、思ったよ。
私に葉山くんはもったいない人だった。
「真奈、痛いのは身体?心?」
「え?」
椅子に座ってあぐらをかいている亜夜は見ていた携帯を置いて言った。
「普段ならほっとくけど、真奈は病人じゃん。フツーに心配だわ。また検査してもらった方がいいんじゃない」
「身体はまだ痛いけど、薬もよく効くし、大丈夫。ありがと」
「ならいいけど。てかお父さん、もうすぐ来るんじゃない?」
時計を指しながら、彼女はすぐに話題を変えた。その優しさにそっと感謝する。
「ねぇーもう帰ってもらってもいいんだけど」
「冷たいねー」
夕方まで重要な会議があるらしく、ホテルからリモートで参加しているようだ。昨日まで離島に行ってた父が今日は重要な会議に参加とは、忙しさが伝わってくる。
そんな父に迷惑をかけている私って本当に手間のかかる娘だなぁ。