その手をぎゅっと掴めたら。

翌日。
買い出しに出掛けた亜夜と交代で、雪ちゃんがお見舞いに来てくれた。

雪ちゃんは制服姿で現れ、ブランドもののバッグを新調したようだ。大人っぽいバッグを持っても違和感ないところがさすがだ。


「今、金欠だから。これで許して」


そう言って渡されたお見舞いの品は、私にとってはとても有難いものだった。


「え、雪ちゃんのノートをコピーしてくれたの?」


「まぁね。これでも授業はちゃんと受けてるから」


「ありがとう!」


葉山くんとの関係が終わってしまった今、授業のノートをコピーさせて欲しいと頼める相手はいなくて、前田先生に相談しなければと気が重い一件だった。


「雪ちゃん、本当にありがとう」


「大袈裟な。…その怪我、凛ちゃんが原因でしょ?」


「なんで?」


ドキリとする。
前田先生に凛ちゃんは関係ないと伝えたはずだ。


「真奈と前田先生が病院に行った後さ、教室が大変だったんだ。葉山くんが、凛ちゃんのこと大声で責めてて」


「え?」


「凛ちゃん、泣き出してさ。葉山くんから聞いてない?」


椅子に腰掛けた凛ちゃんは細い足を組んで失笑した。


「ここ数日、葉山くんとは連絡とってなくて」


別れた、とは言いにくかった。

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