その手をぎゅっと掴めたら。
前田先生と私が救急車で運ばれた後、教室は私の話で持ちきりだったらしい。そりゃぁクラスメートが階段から落ちたら話題にもなるよね。
その場に居合わした凛ちゃんに非があるのではないかと葉山くんが問いただすと、凛ちゃんは泣き出してしまったという。
気の強い彼女を泣かせるくらいに葉山くんには迫力があったそうだ。「モテ王子でも怒ることあるんだね」なんて凛ちゃんは笑った。
私のために怒ってくれたのだろう。
でも本当に凛ちゃんのせいで階段から落ちたわけではない。私が追いかけ回したせいだ。
自分の不注意でたくさんの人に迷惑をかけてしまっている。
「さすがに泣いている女の子にモテ王子もそれ以上言わなかったけどさ、ホームルームの時間に前田先生の代わりに教頭が来たんだよね。それでさ、図書室が荒らされてるって突然言われてね。犯人は名乗り出るようにって言われたんだよ。私にはなんのことか分からなかったけど、名乗りでない場合は警察呼ぶことになるからって教頭が言ったら、凛ちゃんが教室を飛び出しちゃってさ。それから凛ちゃん、学校来てないんだよね」
「それからってことは今日で3日目も?」
「うん。図書室で本が破かれたりしていたみたいなんだけど、やっぱり凛ちゃんが犯人ってことだよね」
雪ちゃんは溜息をついて、探るように私を見た。
「……」
雪ちゃんの言葉を肯定できず、嘘をつくこともできず、目を逸らす。
「まぁいいや…それと、学校に来てないのは凛ちゃんだけじゃないんだよね」
雪ちゃんは言いにくそうに口にした。
「え?」
「本当に聞いてないんだね…葉山くん、真奈が入院した次の日から来てないよ」
今度は雪ちゃんが気まずそうに視線を逸らした。