その手をぎゅっと掴めたら。
ーー言わなきゃ。
私があなたを呼び出したのだから、早くしないと。
絶え間なく鳴くセミたちがより一層に私を急かす。
「あなたのことが好きです。付き合ってください」
棒読みで、ありきたりな台詞を吐き出す。
よし!言えればノルマクリアーだ。
ほっとした一方で心が痛み、目の前に立つ相手の顔は見れない。
後で謝る機会があればいいなと、地面をぼんやり見下ろして返事を待った。
『ノー』という返事さえもらえれば、私は今すぐここから立ち去ってもう二度とあなたに迷惑はかけないと誓います。
本当にごめんなさい。
「…いいよ」
「は?」
疑問符がそのまま声に出て、そこで初めて彼と目が合った。