その手をぎゅっと掴めたら。
葉山くんの家を訪ねる際は遠く感じた道のりも、車ではあっという間で、すぐに南ヶ丘駅に着いてしまった。
後半は人気のスイーツの話題で盛り上がり、葉山くんの話の上手さはお母さん譲りだと知れた。
そして自宅の前まで送っていくと言ってくれたけれど、丁重に断った。
「本当にありがとうございました」
「気をつけて帰ってね。また遊びに来てね」
窓から手を振ってくれたお母さんに頭を下げて、車が見えなくなるまで見送った。
今日は色々とあり、疲れた。
早く家に帰ろうと振り返り、見知った顔を見つけた。
「亜夜?迎えに来てくれたの?」
「コンビニのついでだよ。早く帰るよ」
「…ありがとう」
ほっとした。
一番安心できる存在を前に、我慢していた感情が渦巻く。
耐えきれず、ぎゅっと彼女に抱き着く。
「なに、どうしたの」
優しく頭を撫でられ、涙腺が崩壊した。