その手をぎゅっと掴めたら。
学校に行きたくないと何回も何回も思ってきた。でも私の苦しみは学校にさえ行かなければ、解放されるもので、いじめが止めば心も軽くなった。
葉山くんは苦しみから、いつ解放されるのだろう。もう戻ってはこない友を想い、永遠に苦しみ続けるのだろうか。
「葉山くん…いつか、楽になれたらいいな」
「…そうだね」
亜夜はそう返事した。事情を知るはずもないのに、同調し、大丈夫だよと言ってくれた。
「風邪を引く前に帰るよ」
私の手を引いて、導いてくれる。
私にはそんな立派なことはできないけれど、せめて葉山くんの隣りを歩けたらいいな。
涙を拭い、温かい手をそっと掴んだ。