その手をぎゅっと掴めたら。

学校に行きたくないと何回も何回も思ってきた。でも私の苦しみは学校にさえ行かなければ、解放されるもので、いじめが止めば心も軽くなった。


葉山くんは苦しみから、いつ解放されるのだろう。もう戻ってはこない友を想い、永遠に苦しみ続けるのだろうか。



「葉山くん…いつか、楽になれたらいいな」

「…そうだね」


亜夜はそう返事した。事情を知るはずもないのに、同調し、大丈夫だよと言ってくれた。



「風邪を引く前に帰るよ」

私の手を引いて、導いてくれる。


私にはそんな立派なことはできないけれど、せめて葉山くんの隣りを歩けたらいいな。

涙を拭い、温かい手をそっと掴んだ。


< 201 / 311 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop