その手をぎゅっと掴めたら。
まさかこの私が少女漫画のような展開に遭遇するとは!色々な意味で病み上がりな私にはハードルが高そうです。
「…良かった。これからも言いたいことがあったら、なんでも話して。どんな小さいことでも」
結局、"好きな子"ワードは頭の隅に置いて、そう返事をした。
「うん。佐野も話してね。今は、清水のことを気にしている感じかな」
「…お見通しだね」
凛ちゃんは高校でできた初めての友達だから、やっぱり特別だ。
「正直、俺は面白くないけどね。佐野は俺のことだけを気にしてくれれば、それが一番嬉しいんだけど」
「なっ…」
葉山くんの爽やかスマイルに、パンが喉に詰まりそうになり、慌ててお茶で流し込む。
「まぁ男だったら許さないけど、女友達だもんな。仕方ないか…」
「は、葉山くん。なんかキャラ変わってない?」
「キャラ?彼女とか居たことないし、よく分からないけど、まぁ…そうだね。君のことに関しては独占したいし、もっと、一緒に居たい」
「……」
破壊力のある台詞に絶句していると、葉山くんはふっと笑った。
「本当に、ただ君のことが好きなだけの男だから。他にはなにも持ってないし、今の俺が望むのは"君"だけだから」