その手をぎゅっと掴めたら。
「前田先生に図書室のこと聞いたら、警察には通報せずに学校内だけで収めることにしたらしいよ。読めなくなった本は弁償らしいけど」
凛ちゃんの席に座った早紀ちゃんが頬杖をつきながら言う。
「まぁ大事にならなくて良かったよね」
雪ちゃんは同意して、寒さにかじかんだ手に息を吐く。
私も話は先生から聞いていた。
本人が白状したため反省していると判断したこと、また私を階段から突き落としてはいないことを確認の上、厳重注意で済ませると言う。
ただ校内では退学になったと噂が一人歩きしていた。
「再来週からは定期テストで、それが終わったらもう12月だし。このままだと冬休みに入って、凛ちゃんは余計に登校しにくくなるだろうね」
淡々と雪ちゃんは言葉にする。
年内に登校してもらえるよう説得はしたいと思っているが、無理強いはできない。
学校中に噂は伝わっているし、今まで自由奔放に振る舞っていた分、クラスメートの不満も大きい。
覚悟をして来なければ、今よりももっと傷付くことになってしまう。