その手をぎゅっと掴めたら。
「それから半年以上、毎週うちに訪ねて来てさ。前田先生の粘り勝ち。でも、きっかけは些細なことであっても俺にとっては大きな一歩だったと思う。先生には感謝しているよ」
「前田先生、素敵だね」
前田先生の行動と青山さんのアドバイスは通じるものがあるな。
「まぁ色々あった後だったけれど、高校受験にはなんとか行けて良かったよ」
色々あった後なのに、受験生の中で点数がトップだったってことだよね?恐るべし…。
「そうだ…英知から連絡が来て、今度会うことになったんだ」
「そっか!良かったね」
学校相談会に来てくれた英知くんのことは気になっていたが、話題に挙げてもいいか分からず聞けずにいた。私の予想でしかないけれど、英知くんは葉山くんの過去を知った上で、自分にできることがあればと相談会に足を運んでくれたのだろう。
「良かったら、一緒にどう?」
「え?」
「英知が君もどうかって誘っているんだ。2人だと暗い話になりそうだしね」
積もる話があるのではないかと断ろうと思ったが、相談会での良くない雰囲気を思い出した。
大丈夫そうなら、途中で席を外せばいいんだもんね。よし、様子見に行こう。
「葉山くんが良いなら、行こうかな」
「良かった、ありがとう」