その手をぎゅっと掴めたら。
「虹ヶ丘ランド楽しみだよね!3人で回ろうね」
クラス中が再来週に迫った定期テストよりも校外学習で持ち切りだ。
早紀ちゃんの言葉に頷く。
「うん!」
一緒に回れる友達がいることが嬉しい。中学の卒業旅行は亜夜と別のクラスだったから、苦い思い出もある。だけど亜夜が抜け出してきてくれて、お腹がはち切れるくらい食べ歩きをした思い出の方が強く印象に残っている。
「はぁ?」
しかし雪ちゃんは呆れたように言う。
「真奈はモテ王子と回るに決まってるでしょ」
「あ、そっか!」
早紀ちゃんも両手を合わせてごめん!のポーズをとってきた。
「でも私、葉山くんと約束してないんだよね…」
「約束しなくたって、普通に一緒に回るでしょう。去年の文化祭の時なんて、モテ王子は大変そうだったよ」
「どんな風に?」
前のめりになって雪ちゃんに尋ねる。
去年はまだモテ王子の人気度を把握はしていても、遠い世界の人だと思っていた。
「モテ王子のクラスは執事喫茶をやったからさ、ツーショット撮りたい女子がクラスに溢れかえってたよ。今年もそうならないように、真奈がガードしなきゃ」
容易に想像がついてしまう。
今日も葉山くん目当てに女子がちらちらと教室の外から見ていた。クラスの女子も目の保養だと言って葉山くんを見つめる。
それも、私よりもずっと可愛い女の子たちが…。
「私なんかがガードになるの?」