その手をぎゅっと掴めたら。

身体中の水分が無くなったのか、涙は止まり、大きくむせた。


「佐野?大丈夫?」


狼狽えて葉山くんが立ち上がった姿を見て、やっと落ち着いた。

そうだ。
葉山くんが辛いのなら、支えていくと決めた。
私が泣いてたら駄目なんだ。


「話してくれてありがとう」


鼻水をすする。
目が腫れて、メイクも落ちて、私の顔はぐしゃぐしゃだと思う。見るに耐えないだろうけど、それでも葉山くんの目を見て伝えたかった。



「そんな葉山くんが、大好きだよ」

「佐野…」


立ち尽くしている葉山くんを見上げて、笑う。

不恰好でも無様でも、なんでもいい。
葉山くんに伝えられれば、それでいいんだ。


「瞬さんの代わりにはなれないだろうけど、私はずっと葉山くんの傍にいるからね」


葉山くんの目から、一粒の雫が流れた。


< 262 / 311 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop