その手をぎゅっと掴めたら。

さの喫茶の店内を背景に撮られたその写真は、

変わらない祖父の姿と、満面の笑みをした青年が写っていた。



待って。何故、何故ーーどうして。

だって、彼は、ーー。



「葉山くん、この人、」


「うん?」



次の瞬間、『言わないで』と小さな囁きが耳に届いた。


思わず後ろを振り返る。

後ろにはメリーゴーランドと、それに乗る人々の笑顔があった。


「佐野?どうかした?」


「……」


「佐野?」


「…ううん、なんでもないよ」


ーーその声は、確かに私に届いた。


< 264 / 311 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop