その手をぎゅっと掴めたら。
さの喫茶の扉を開けて、カウンターに座る。
止まったはずの涙がまた、溢れ出た。
葉山くんの前では懸命に我慢したその涙は、止める術なく流れ続けた。
胸が痛い。息が上手くできずに苦しい。
どうにもならなくて、この哀しみの矛先をどこに向けたらいいのか分からず、下唇を噛み締めた。
「真奈!どうしたの!」
どれくらいの時間、そうしてただろう。
太陽が沈み真っ暗な店内で私の姿を見つけた亜夜は珍しく甲高い声を上げた。
「虹ヶ丘ランドでなにかあったの?」
亜夜は引きずるようにして私をベッドに横にならせておでこに手を当てる。難しい顔をしながら熱がないかを確認している。
「ちゃんと話すから…今は聞かないで」
葉山くんに別れを切り出されたあの病室と同じお願いをする。
「分かった。お粥作るね」
「食べられないと思うから、いらない」
「無理にでも食べるの」
「いらない」
駄々をこねる私の目元に温かいタオルを置いてくれた亜夜はため息をついた。
迷惑かけてばかりでごめんね…。