その手をぎゅっと掴めたら。
いつも通りの彼がそこにいた。
黒縁眼鏡をかけて白いシャツと細身のパンツ。
なにひとつ変わっていない。
「青山さん、」
「待たせてごめんね」
カウンター越しに首を振る。
こうしてまた会えたことに安堵する。
「改めまして、青山 瞬です。親友の北斗がいつもお世話になってます」
「……あなたは、青山さんは、」
聞きたいけれど、言葉にできない。
どんな言葉を紡げば、青山さんを傷つけずに済むのだろう。
「うん。俺は、もうこの世にはいない人間だよ」
吹っ切れているかのように青山さんは笑い、カウンター席まで歩いてきた。
「傷ついた友へ最後のエールを送るために、君の力が必要なんだ」
青山さんは、確かに此処にいる。