その手をぎゅっと掴めたら。
涙袋が目立つ大きな目。
小顔な彼に似合うショートヘア。
身長は高めで足が長くて、顔もスタイルも完璧で、もちろん私なんかが吊り合う相手でないことは承知しております。
だからきっと返事を聞き間違えたのだ。
約束の30分前から日向で彼を待ち、太陽にさらされて、頭がぼうっとしているのだろう。とにかく暑さのせいなのだ。今年は例年になく猛暑だから。
「それじゃぁ、今日から君は俺の彼女ってことで。暑いからもう行っていい?」
「あ、はい。暑い中、すみませんでした」
「ん」
立ち去る彼の後ろ姿を見送る。
清々しい顔をしていたけれど、やっぱ彼も暑かったよねーーーーって、いや、ちょっと待って。
彼はなにを言った?暑さの話題以外にーー。
冷静に考えられなくて、校舎の影に隠れている友人を振り返る。
彼女たちは目を大きく見開いて、ぽかんと私を見ていた。