その手をぎゅっと掴めたら。

涙袋が目立つ大きな目。
小顔な彼に似合うショートヘア。

身長は高めで足が長くて、顔もスタイルも完璧で、もちろん私なんかが吊り合う相手でないことは承知しております。

だからきっと返事を聞き間違えたのだ。
約束の30分前から日向で彼を待ち、太陽にさらされて、頭がぼうっとしているのだろう。とにかく暑さのせいなのだ。今年は例年になく猛暑だから。


「それじゃぁ、今日から君は俺の彼女ってことで。暑いからもう行っていい?」


「あ、はい。暑い中、すみませんでした」


「ん」



立ち去る彼の後ろ姿を見送る。
清々しい顔をしていたけれど、やっぱ彼も暑かったよねーーーーって、いや、ちょっと待って。

彼はなにを言った?暑さの話題以外にーー。

冷静に考えられなくて、校舎の影に隠れている友人を振り返る。

彼女たちは目を大きく見開いて、ぽかんと私を見ていた。

< 3 / 311 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop