その手をぎゅっと掴めたら。

4時間前、お昼休み。

突然、凛ちゃんが箸ケースでバシッと机を叩いた。

結構大きな音がしたけれど、周囲は笑い声や馬鹿騒ぎする声で溢れかえっていて騒音のひとつにすぎないようだ。


「ねぇねぇ、良いこと考えちゃった」

「なになに?」


身を乗り出して早紀ちゃんが反応する。私もとりあえず箸を置いて言葉の続きを待つ。


「あたしらの中で数学の小テストの点数が1番低い奴が、罰ゲームって賭けたじゃん。その罰ゲーム、嘘の告白ってどう?」


「なにそれー!」


「告白の相手は誰でも良いってことで」


凛ちゃんの突拍子もない発言に雪ちゃんが笑い、早紀ちゃんが手を叩いて賛同する。


「名案でしょ?真奈もいいよね?」


名指しされ、3人の視線が私に集まった。


「もちろん」


迷わず、即答。
とっさに笑顔さえ作った私は心隠して、友人の意見を尊重した。

またやってしまった…。


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