その手をぎゅっと掴めたら。

机の上、新たに上書きされた落書き。


掌サイズで描かれたそれは、
ハートがついた傘のイラストと、左右に2人の名前。


「相合傘…」

「消されても、何度も描いてやるよ」

「…嬉しいけど、恥ずかしい!」


素直な感想が口から出ると、葉山くんはまた笑った。


「やばっ、俺も恥ずかしっ。キャラじゃねぇだろ」


顔を見合わせて笑う。


「葉山くんって、すごいクールな人だと思ってたけどなんか違う。私、葉山くんの笑顔が好きだな」


「………サンキュ」


「……う、うん」


一瞬にして葉山くんの笑顔が消え去った。

まるで恋人同士のような空気に流されて、笑顔が好きだと本人に告げてしまったけれど。言い過ぎたな。

葉山くん絶対に引いてるよ…。
余計なことを言わないように気をつけないと…。


甘さと、苦さが残る放課後。
葉山くんといる間だけは、凛ちゃんたちのことを忘れることができた。

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