その手をぎゅっと掴めたら。
祖父は私宛に2つの遺言を託した。
1.祖父所有の喫茶店を含めた不動産は私に譲渡すること。
2.とあるひとりの常連客のため、冬までお店を開けて欲しいとのこと。
2つの遺言通り、私と亜夜は予定通り祖父の家で暮らしている。もうひとつの遺言についても、まぁなんとか守れているかな。
祖父がひいきにしていた常連客"青山さん"は、週に一度、金曜日にお店にやってきて、"オリジナルブレンド"を注文する。
青山さんは留学が決まっていて、年明けに発つという。それまでの間、毎週金曜日にオリジナルブレンドを提供し続ける。
それは青山さんと祖父の約束だったようで、代わりに私が引き継ぐことになった。ただし、コーヒーについて素人同然のため青山さんには申し訳ない気持ちでいっぱいだ。