その手をぎゅっと掴めたら。
亜夜は軽音部に入っていて、いつも重そうなギターを背負って帰ってくる。
高校も軽音部の活動が盛んなところを選び、勉強よりギターの練習に力を入れているようだ。
「ただいま。ケーキ買ってきたよ」
「ケーキ?亜夜が?珍しい」
可愛い女子というよりはカッコいい系女子の亜夜は、お洒落なカフェやスイーツを疎遠している。自分には似合わないんだって。
全然、そんなことないけどね。
「あんたに彼氏ができたお祝い。よく考えたら初カレじゃん」
テーブルの上に置かれた綺麗な箱は有名店のもので、中身を見なくてもその美味しさが伝わってくる。
「…まぁ、ニセだけどね」
「そういうのってきっかけが大事じゃん。このままホンモノになるのもありかもよ?」
「私と葉山くんだと、吊り合わないよ」
「それは、北斗が決めることだから」
相変わらずの北斗呼びに笑ってしまった。いつか亜夜を葉山くんに紹介できたらいいな。