その手をぎゅっと掴めたら。
だからくだらない遊びのひとつやふたつで、凛ちゃんと友達を辞めたいとは思わないけど。それでも小テストの結果、私の点数が最も低いと知った時、胃がキリキリと痛み出した。
「うわー、真奈!あんたが1番ダメじゃない!はい、罰ゲームね」
小テストが返されると授業中にも関わらず凛ちゃんも早紀ちゃんも、雪ちゃんも、まるで私の点数が1番低いことを知っているかのように、机の周りに集まってきた。
「真奈、例の相手は誰にする?放課後までに考えておいてね」
早紀ちゃんに満面の笑みで言われて、頷くしかなかった。今更、嫌だとは言えない。すぐに断らなかった私が悪いんだし。でも困ったな…。
「……モテ王子なら、適任かもね」
ゲラゲラと笑いながら席に戻る2人よりワンテンポ遅れて立ち去った雪ちゃんが小声で言い残して行った。
雪ちゃんは名家のお嬢様で、他の2人とは少しだけ違う。甘やかされて育ち、わがままな女の子だけれど時折、冷静な一面を見せる。
たぶん私のことを可哀想と思ったのだ。
結局、雪ちゃんの助言に従ってクラス一、いや校内一のモテ王子と呼ばれる"葉山 北斗(はやまほくと)"を嘘告白の相手に選んだ。