その手をぎゅっと掴めたら。
公園で休憩した後、口数が少ないままに予約していたカフェに着く。
予約制のためすぐに4人掛けの席に通されたが、店内は満員だった。
食事系のメニューは3種類のみで、
パンケーキか、チーズケーキ、ショコラケーキのいずれかを選べてトッピングの自由度は高い。
「私ね、この苺スペシャルパンケーキが食べて見たかったの」
「その名の通り、ボリュームがありそうだね」
苺は契約農家から直送のため新鮮さが売りで、自家製の生クリームは口の中でとろけるようだと、亜夜と調べた口コミに書いてあった。
「葉山くんはどうする?飲み物はコーヒーで、ミルクとお砂糖なしでいいよね」
「うん。コーヒーと、佐野と同じケーキでいいよ」
「了解!私はハーブティーにしてみる」
タイミングを見計らって現れたウエイトレスに注文し、待ち時間でそっと店内を見渡す。
平日のせいか学生らしき姿はなく、大人なカップルか女性同士が多い。テーブルに置かれた苺とホイップたっぷりのパンケーキに目を奪われる。
「ねぇ、すごく美味しそうだね」
「そんな見なくても、すぐ運ばれてくるだろう」
少し離れたテーブルのパンケーキを凝視していると、その席の女性と目が合う。
しかしすぐにその視線は葉山くんに移っていく。
その女性は一緒に来ていた友人の肩を叩き、今度は2人の視線が葉山くんに刺さった。