悪い優等生くんと、絶対秘密のお付き合い。
「ん?」
「どうしたの?」
「お母さんから早く帰ってくるように言われてたの、今思い出して……ごめん、先帰るね」
「え、ならあたしも帰……」
「いいのいいの!
せっかくなんだし、勉強しててよ!」
でも……と渋るすずちゃんに笑いかけて、急いでカバンを持つ。
気まずそうに江川くんを見るすずちゃん。
大丈夫。
ふたりならきっとうまくいく。
江川くんにならすずちゃんをお任せできる。
ふたりを応援する役目はもうここまでだ。
とにかく今は……。
早く。早くここから離れたい!!
これ以上、わたしの顔が赤くならないうちに!
『がんばってね、江川くん』
そんな気持ちを込めて江川くんを見れば、
『ありがとう。
向坂も、がんばれ』
横に座っているすずちゃんが気づいてないのをいいことに、ニヤリと笑う。
がんばれって……なに!?
「じゃ、じゃあわたしはこれで……」
「気をつけてね!」
「また明日な〜!」
手を振ってくれるふたりに笑いかけて、ダッシュで教室を出る。
『4階の視聴覚室で待ってて。
すぐ行く』
机の下でそっと手に握らされた紙に書かれた文字。
『絶対離せないと思うから、心の準備しといて』
「はぁ……っ、もう……」
心臓、ちゃんと持つかな……。