悪い優等生くんと、絶対秘密のお付き合い。


「漣くん……」


息して。

そう言われてるみたいに背中をなでられて、それからゆっくり体を離された。


「あの男に腕掴まれそうになってるの見て、頭狂うかと思った。なんで、店から出たの」


コツンとおでこが合わさって、視線が交わる。


「ごめんなさい……」


絡まった先にあるその瞳が、ゆらゆらと切なげに揺れて。

いつもの余裕そうな表情なんか欠片もない。

ただ、心底心配でたまらなかった。


そう言わんばかりの顔をさせてしまったことに、胸にズキっと痛みが走った。


「俺、中で待ってるように言ったよな。
なんで、出たの?」


怒っているのはわかってる。

でもわたしのまぶたをなでる指はやっぱり優しいから。


「漣くんが、いやがると思ったから……」


いつもだったらきっと言えない。

はずかしくて言えないちゃんとした理由も、こぼれるように落ちてくる。
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