月の光に響く時
私は母や本家の叔母を呼んでおじいちゃんを病院へと連れて行った。

おじいちゃんは個室のベッドで点滴を打ちながら眠っている。


「沙夜、今日はもうお母さんと帰りましょう。おじいちゃんは義姉さんがついていてくれるって」


「う・・うん・・」


「おじいちゃん少し無理しすぎたのね・・倒れるほど掃除するなんて」


私は母に本当の事を話してない。

信じてもらえるハズない。

人間離れした不審者の事や、雷を落とす短刀の事なんか。



私が病室を出て行こうとした時、おじいちゃんが私を呼んだ。


「沙夜・・」


「おじいちゃん?大丈夫!?」


「ああ・・帰るのか?」


「うん、また明日来るからね」


「・・・俺の部屋に、沙夜に渡そうと思っているものが入っているから。今すぐに取りに行け」


「え?今すぐ?」


「ああ。いいな?」


「・・わかった」


なんて弱々しいおじいちゃんの目だ。

今まで見たことのない目で私を見つめている。

訴える様なそんな目。

いつもなら明日にするとかワガママ言ってしまうけど、今日はおじいちゃんの言う事に従った。

本当は退院するまでずっとついていてあげたいくらいだ。


「おやすみ・・おじいちゃん」


「ああ、おやすみ。気を付けてな」


後ろ髪を引かれる思いで私と母は病室を後にした。

< 12 / 83 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop