月の光に響く時
家に着くと、私は母と別れ一人でおじいちゃんの部屋に向かった。

広い縁側を通って一番奥の座敷だ。

部屋の電気をつけ辺りを見回す。

おじいちゃんの部屋はがらんとしていて物はあまりない。


「何処らへんにあるのか聞くの忘れちゃった・・あ、あれかな?」


机の上に小さな巾着を見つけた。

赤い袋に金の菊の刺繍がしてある和柄の巾着だ。


「これ・・かな?」


近くを見ても何も見当たらない。

どうやらこれらしいと思い巾着の紐をほどいた。


「石?」


中から石ころが出て来た。

磨いていない原石みたいにでこぼこしてる。


「こんなものをなんで私に?」


首を傾げながらジッと見つめていると、何故か脳裏に短刀がよぎった。


「アレと関係あったりして・・」


ついでにおじいちゃんを突き飛ばした男の人の顔も思い出してしまった。

ゾクッ


「怖い・・」


アノ人、やっぱり幽霊か何かだったのかな?

一瞬でいなくなったし・・。

ヤバ、今日眠れないかも。


びくびくしながら私は本家の玄関を後にした。

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