月の光に響く時
「ん・・」


目を覚ましたら知らない天井が見えた。蒼い墨で龍が描かれている。

ここは何処だろう。ぼーっとして力が入らない。

恐らく眠り薬の様なものを吸ってしまって動けなくなっているみたいだ。


「ぇ・・」


ドキッ

人の気配を感じ横に体を向けると、男の顔が目の前にあった。


「なっ・・」


ジッと私を見つめている。


怖い!

重い体をひきずり、後ずさろうとしたら腰を引き寄せられた。

すっぽりとその人の胸に顔をうずめられてしまった。

体が密着していて動かせない。


「少し荒っぽかったな。すまない。だがケガは無い様だ」


急に紳士的に謝られ、どうしたらいいのか戸惑った。

声がとても穏やかで落ち着いている。

その人は一番初めに現れた長髪の紫の瞳をした人だった。

おじいちゃんを突き飛ばした人。

とても怖い人だ。

ぐっと思わず体を強張らせた。


「そんなに力を入れなくてもいい。酷い事は何もしない」


嘘だ。簡単に豹変するに違いない。

体が動かせないので、貝のようにジッとした。


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