月の光に響く時
「あの・・貴方は・・?」


私の問いかけに思い出したように男は教えてくれた。


「そうか、記憶がないんだったな。俺は律鬼。蒼家の鬼だ」

「りつき・・そうけ?」

「そうだ。今から約1000年前にお前に封印された、蒼の鬼だ」

「・・・?」


おずおずと見上げると頭に角を発見した。

どうやら見間違いではない様だった。


「1000年前、お前は月の力を授かる姫巫女だった。名をかぐやという」

「かぐやって・・・あの?」

「その名は知っているのか?」

「お伽話に出てくる名前・・です」

「そうか。そうやって語り継がれてきたのか」


安心した様な顔で律鬼さんは私の髪を優しく撫でる。


「ずっと、お前が欲しかった・・」

「え・・?」

「お前と一緒に、生きて行きたかった」


そう言って律鬼は私の頬を持ち上げると、ゆっくりと優しい口づけをした。
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