月の光に響く時
コンコンコン

「失礼します」


重い空気を割って入ってきたのは、律鬼さんと同じ紫色の目をした鬼だ。

肩まである髪を一つに束ねている。


「律鬼様、紅家が動き出した様です」

「だろうな。今頃コレを血なまこになって探しているだろう」


ぱちり、と目があったので私は怯えつつ様子を伺った。
男は一見笑顔に見えるが目はあまり笑っていない様に見える。


「初めまして。と言った方がよろしいですか?記憶が無いんですよね。
私は律鬼様の側近、奏(カナデ)です。宜しくお願いします」


礼儀正しくお辞儀をされたので、私は更に後ずさる。知的な感じで、雰囲気が苦手なタイプだ。見るからに私を見下したような目つきをしている。


「おやおや、随分と臆病になられましたね。1000年前はあんなに凛としてらしたのに」


そんな事言われても私は私だ。しかもまだこの人達の事が信じられなくて頭がパンクしそうになってるし。


「あまり虐めるな。今は何も知らない雛の様なものだ」

「そのようで」

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