月の光に響く時
「律鬼様、紅家はどうなさいますか?恐らく全勢力を持ってここへ乗り込んで来るでしょう」


「だろうな。こちらも同じ勢力を持って交戦するまでだ。負ける事は許さない」


「ではすぐに同胞に伝えましょう」


奏はお辞儀をして足早に部屋から出て行った。

また律鬼さんと二人きりになってしまった。


しん。

と静まり返った部屋。


律鬼さんの指が私の顔に近づいてきて、反射的に身を引いてしまう。


「沙夜・・と言ったな」


ドキン


名前を初めて呼ばれた事に驚いた。

私はかぐやじゃないってわかってくれたんだろうか?

律鬼さんの声は落ち着きを取り戻し、穏やかに部屋に響く。


「これから桜鬼が攻めてくるが、お前は奴には渡さない」


力の入らない私の腕を引き、再び顔を胸に埋められた。

鍛えられた広い胸板だ。


「お前は沙夜だ。かぐやではない・・理解した」


何かを振り払った様に律鬼さんは言った。

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