月の光に響く時
「は・・・っ・・」


いつの間にか涙が溢れていた。


それに気が付いたのは私よりも律鬼さんの方が早かった。


「お前・・」


「な・・なんでもない・・どいてください」


律鬼さんの身体を押して、私はすぐにその場から離れた。

扉の近くに逃げるようにして。





金髪の鬼。紅家の当主。

あの人が

昔私が・・・好きだった・・・人なの?



そう思った瞬間、体がカッと熱くなった。



「そんな・・」


鬼を好きになったの?

敵なんだよね?

私を殺そうとしてるんだよね?

なのになんで?


「沙夜」


手を掴まれそうになったので、すぐに振り払った。


「近づかないでください・・嫌・・」

「!!」


律鬼さんの目の色が変わった。

何かを悟ったのかもしれない。


二人の間に緊張が走る。

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