月の光に響く時
「良かった。死んでなくて」


ドキン


桜鬼はそのまま私の肩の傷に優しく口づけをした。


「目が覚めたから、お前も何処かにいると思ってすぐに探したんだけどな」


凄く馴れ馴れしい感じ。

やっぱりこの人は前世の私を手に入れた鬼だという事なんだろうか。

距離感が近い。



「かぐや?どうした?」


「あのっ・・私かぐやじゃない・・です」


「何?」


「記憶なんてないし・・名前だって沙夜だし・・かぐやじゃないです」


「あ・・ああ、そうだったな」


私の戸惑う声を聞いて桜鬼は体をすぐに離した。


「そもそも・・人間です。なんの力もないし」

「それは違う」

「え・・」

「お前を護ったあの短刀。あれは代々月の一族のモノ。御石もな」


まっすぐ私の目を見て桜鬼は教えてくれる。


「お前を護る為に、俺達を近づけまいと刀は反応したハズだ」

「あ・・」


確かに初めて律鬼さんに会った時、刀が護ってくれた感じだった。

屋根から降りてきた知らない鬼達からも。


「確かに1000年の刻を経て生まれ変わったかもしれないが、お前は月の姫巫女だ」


「姫・・巫女」


聞いても全然ピンとこないし、まるでおとぎ話を聞かされているみたいだ。


「れっきとした月の御使い。俺達を封印する為のな」


「!!」


そっか、この人は全部知ってるよね。

きっと律鬼さんたちも。

何も知らないのは私だけだ。

そりゃそうだ・・だから私はこんな目にあっているんだ。

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