月の光に響く時
「あの・・私と貴方達は因果の関係だって・・」

勇気を振り絞って聞いた。


「あ?ああ・・一応」

「一応って・・私を殺す事が鬼の繁栄になるって聞きました」

「本来ならな」


目を逸らす桜鬼を見てニヤニヤしている誉がいる。


「何いってんスか!二人はラブラブでしょうが!桜鬼様が姫様を殺せるハズないっスよね」

「ち、誉。口縫うぞ」

「ふふ。好きすぎて辛いって言ってましたよね~」

「おい。マジで縫うぞ、ダマレ」


まるで兄弟みたいな会話。

律鬼さんと奏とは大違いだ。

同じような主従関係なのだろうけど。


「あの・・」

「・・ま、本当の事だからしょーがねえ」


ドキン


サラっとスマートに桜鬼は言った。


「だから、昔からお前を他の鬼から護る為に存在してんだよ。俺は」

「・・護る」

「手出しさせない。お前と誓った。一緒に死ぬまで離れない」


そんな。

そんな大事な事を1000年前に約束したんだ。

相思相愛だったんだ。

なのに今それを聞いても私はなんの感情も湧き上がってこなかった。

好きという感情は湧き上がっては来なかった。

目を逸らしてしまった。


「そうだったんですね。前世の私は・・」

「・・」


前世の私・は・。

と言うのが正直な感想だった。


「俺は今だって変わらない。ずっと、変わらねえよ。お前が何回生まれ変わっても」


桜鬼はそう言って私の手を握った。その手の握る強さが想いの強さでもあった。


なのに私は・・・。
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