月の光に響く時
「あの・・お願いがあるの」

「あ?なんだ?」

「私の家が無事か・・お母さん達の顔を見たい」

「・・・」


桜鬼はまた黙ってしまった。


「きっといなくなって心配されてる・・」


考えるだけで胸がズキズキと痛い。

家の庭で鬼達が襲い掛かってきて、きっと家も壊されてるハズだし。


「あそこはお前の本当の家じゃない」

「え!?」


何それ!?私は生れてから17年間あの家で育ったんだけど!?


「あれは仮の家だ。月の民が特別に選んだ人間に紛れ込める様に」

「そ、そんな事言われても私には大切な家だし」

「まあ、そう思うのは仕方ねえかもな。・・見せてやってもいいけど、その代わり家に二度と戻らないって誓え」

「!!!」


どうしてそんな酷い事を簡単に言えるんだろう。

私は家に帰りたいってさっき言ったのに。


「いい加減分かれ。お前は普通の人間じゃない。二度と同じ生活は出来ない」


ぴしゃりと言われた。

ストレートに。

立ち直れない程ボコボコにされた気分だった。


「まーまー、桜鬼様あんまり本当の事言っちゃうと姫様が可哀想スよ」


誉・・全然フォローになってないよ。


「俺はこいつには覚悟して欲しいだけだ。自分を理解できていないならなおさらだ」


「もういい!わかった!!言わないでっ」


悲しみが怒りの方へ切り替わった。

この人、全然優しくない!!
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