月の光に響く時
桜鬼は私を抱きかかえたまま庭へ降りた。

今は真昼だ。

鳥のさえずりが聞こえる。

いたっていつもの日常の様だ。


「誉、先に行け」


「はっ」


誉は忍び足で音を立てずに颯爽と家の中に入っていった。


「・・・気配を感じる」


とぼそりと桜鬼がつぶやく。その言葉に自分の体が更に怯え震える。


「え?」

「蔵の方だ。鬼がいる」


ドキン


「桜鬼・・」

「大丈夫だ。ただの雑魚なら一瞬で消せる。・・・だが・・」


だが?



話すを止め、桜鬼はゆっくりと蔵に向かう。

< 70 / 83 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop