月の光に響く時
抱きしめられ、体が勝手に拒否反応を起こす様にガタガタと震えだした。


「は・・離して・・」

「駄目だ」

「いや・・嫌だ・・来ないで・・怖い・・」

「沙夜」

「怖いよ・・・鬼なんて・・鬼なんて存在しなければいいのに」

「・・・」


律鬼さんの目を見る事なんて出来ない。

律鬼さんにどう思われたっていい。

本音だ。

私の大切な家族を殺したのは・・

鬼だ。


「嫌い・・鬼なんて・・許さない・・・」

「沙夜・・」

「離して!!私を帰して!!」


律鬼さんの腕を解こうと全力で体を動かす。

びくともしないけど、でも、全力で跳ねのける。

殴る。噛んでみる。


「離して!!嫌だ!!大っ嫌いだ!!!」

「沙夜!!!」


ビクッ


けたたましく名前を呼ばれ、私は固まってしまった。

恐る恐る見上げると、律鬼さんの顔は苦しそうに歪んでいた。

唇を噛みしめていた。


なんで貴方がそんな顔するの?

なんでなの?

辛いのは私なのに。
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