月の光に響く時
「もう少し俺が早ければ助けられたかも知れない。すまなかった・・」


「は?」


思わず声に怒りが乗ってしまった。


「今更謝られたってお母さんは帰ってこないんだよ!?なんでこんな事にっ・・どうしてっ」

「沙夜・・」

「そもそも、なんで貴方達は存在するの!?こんな事、誰も信じないし認めない!!人を食らう鬼なんて!!」



バンっ!!


すると突然扉が開き、血相を変えて奏が入ってきた。

目が赤く充血している。


「あうっ!!」


私の首を絞め、その手は体ごと持ち上げる。


「奏!!何を・・」

「律鬼様、お許し下さい。処罰は後でなんでも受けますので」


奏は目を最大限に開き、私を睨む。


「この女・・・律鬼様がこんなに情を下さっていると言うのに・・何故理解しない!!」


ギリギリと腕に憎しみがこもる。


「あ・・っ・・は・・」


息が出来ない。


「本来なら人間の事など気にかけるまでもないと言うのに!!
そんな偉大な律鬼様を侮辱するなんて・・絶対に許しません!!!」


「あ・・か・・っ・・はぁっ・・」


殺される。

もう何も出来ずに私はこのまま死ぬんだ。

お母さんみたいに。


それくらい奏から殺意が伝わってきて。

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