君が隠した私の秘密
ーーガラ
少し雑に開かれた扉。
自然とそちらに目を向ける。
そこには"イケメン"という言葉がぴったりな男子高校生がいた。
「失礼しまーす…」
無気力だけど透明感のある声が病室に響く。
この病室は個室だ。
入ってくるということは私の知り合い?
びっくりするほどその男の子に見覚えがなく、必死に考えを巡らせる。
その瞬間、私と男の子は目が合った。
「ひ…な…?」
驚きと嬉しさが混じったような声。
「ひな、ひな…!」
何度も"ひな"と言い、私に抱きつく男の子。
その言いぶりだと、私は"ひな"と言う名前らしい。
なぜ自分の名前すら覚えていないのだろう…?
「よかった…本当に、よかった…」
心底嬉しそうに、涙ぐみながら抱きつく力を込める彼。
それでも私は彼のことが全く分からない。
人違い…な訳ないけれど、念の為聞いてみることにした。
「あ、あの…私、あなたに見覚えがなくて…知り合い…でしたか?」
久しぶりに声を出したから、少し声が裏返る。
私の頭の中は疑問でいっぱいで、少し失礼な聞き方になってしまったかもしれない。
すると、彼は元々大きかった目をこれでもかと見開き、たちまち泣きそうな顔になった。
「本気で、言っているのか?覚えて…ないのか…?」
信じたくない。
そう心から思っているような声で確かめるように言う。
「……医者を呼んでくるな。」
そう言って、病室から出ていく。
私は彼をすごく傷つけてしまったのかもしれない。
そう思った途端に、罪悪感が伸し掛る。