そして最後の嘘をつく
走ってスーパーに向かう。

リュックに忍ばせていた折り畳み傘は、
骨が脆くてすぐに壊れてしまったからだ。

先ほどネットで調べたところ
通り雨らしく1時間ほどでやむとの
ことだったのでとりあえず
1番近いスーパーで雨が止むまで
雨宿りをすることにした。

スーパーまでの道は横断歩道が
多く、何度も足止めをくらう。

壊れた折り畳み傘でなんとか
雨を凌ぎながら信号が変わるのを
待っていると、ふと視界の端に
1人の女性が見えた。

女性は傘を持っているのにささず
こちらに背を向けて空を見上げ、
雨に濡れている。

信号が変わると僕はすぐに
女性の方へと駆け出した。

傘を女性の方に傾けて尋ねる。

「風邪引きますよ、何してるんですか?」

女性が、振り返る。
それが彼女との出会いだった。
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