そして最後の嘘をつく
『何故か濡れたい気分になったの。』

2人で相合い傘をしながら
スーパーに向かう中で、彼女は
そう説明してくれた。

孤高の天才ピアニスト。

その名前はクラスメイトから
聞いたことがあった。

『ピアニストの如月さんですよね。
貴女みたいな方は、体調、
崩したらいけないんじゃないですか。
貴女の演奏を待っている人が
たくさんいるでしょう?』

僕がそれを口に出すと彼女は
口元を僅かに歪めた。

「偽物の期待なんかいらないよ。」

それから、こちらを向いて微笑む。



「君は何をくれるの?高校生くん。」
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