昔飼ってた犬がイケメン男子高校生になって会いにきた話
会社の昼休み、葉月と朱里は休憩室でそれぞれ持参した弁当を食べていた。
「私、実はこの前合コンに行ってきたんだ」
「どうだったんですか?」
「ふふふ、楽しかったよ」
その言葉通り、朱里は上機嫌になりながら言った。
「楽しかったなら何よりですよ。それより、いい人はいましたか?」
「いい人かどうかはまだわからないけど、今度ご飯に行く約束したんだー」
「マジですか。よかったですね」
「うん。葉月はどうなの? この前の男とは」
「いや、だからあれは別に……そう言う恋愛系とは違うし、勘違いしないでください」
怪訝そうに葉月を見ると、「えー。本当に?」と朱里が言った。
「本当です」
「なんだ。面白い話が聞けると思ったのに、残念」
朱里は相変わらずこの手の話が大好きだ。葉月も好きじゃないわけではないけど、自分のこととなると、特にこれと言って何もないのが現状だ。
「葉月も合コン行ってみる? 私セッティングしてあげるよ」
「大丈夫です」
きっぱりと断った葉月に対して、「やっぱりいないとか言いつつ、本当はいるんじゃないの?」と疑い深く朱里が訊いた。
「だから違いますって」
「本当かな」
葉月は朱里の執拗さには少々参っていた。そして弁当の中に入っていた最後のウインナーを手にすると、勢いよく口の中に入れた。
噛みながら弁当の箱を閉めて片付けていると、テーブルの上に置いていたスマートフォンが震えた。
『今日の昼飯は、自分で作ったフルーツサンドです』
翔からラインのメッセージと一緒に、友達と楽しそうにしている写真とフルーツサンド単体の写真が二枚送られてきた。
最近わかったことだが、翔は料理が得意らしい。翔のお母さんが忙しい時は、こうしてたまに翔が自分の昼ご飯を作るそうだ。
『美味しそう! 翔は本当に料理上手だね』葉月は喜んだスタンプをつけて返事をした。
『今度、葉月さんにも食べてもらいたい!』翔も葉月以上に喜び溢れるスタンプをつけてラインを返してきた。
葉月と翔の、姉と弟のような友情関係は良好だった。
葉月はこんな他愛のない会話が心地よくて好きだった。
彼氏とはまた違う、翔と言う弟みたいな存在との関わりが、葉月の心を癒した。
この関係は他の人から見たらどう見えるんだろう。
単純に疑問に思った葉月は、朱里に訊いてみることにした。
「朱里さん、友達の話していいですか?」
朱里に自分の話だと思われないように、葉月は予防線として『友達の話』と言う前置きをした。
「え、何? 気になる。聞かせて」
「突然、今まで顔も知らなかった人から友達になりたいって、男の人にお願いされたらしいんですけど、それって朱里さんどう思います?」
「ええ、ナンパ?」
「やっぱりナンパなんですかね」
「いや知らないけど、単純にその友達がタイプだったんじゃないの?」
「なるほど」葉月は頷いた。
しかし、翔が葉月とそう言う関係になりたいと思って話しかけたとは考えにくい。
例えそうだったとしても、翔のことを弟としか見れない葉月にとっては、複雑な気持ちになるだけだった。
「それ以外に何か理由があると思いますか?」
「ないんじゃない? ほら、男女の友情は成立しないってよく言うじゃん? 好きだからそう言ったんだと思うよ」
「好き……」
「一目惚れだかなんだか知らないけど、結局は彼氏彼女になりたいんじゃないの?」
葉月は自分で朱里に訊いておいて訊かなければよかったと後悔した。今の一緒にいて心地よいと思う翔との関係を壊したくはない。
でも翔が本気なら、人として真剣に向き合う必要がある。
翔は今後何を打ち明けてくるんだろうと思ったら、胸が波打つと同時に、どんなことでも受け止めようと葉月は覚悟を決めた。
☆
「私、実はこの前合コンに行ってきたんだ」
「どうだったんですか?」
「ふふふ、楽しかったよ」
その言葉通り、朱里は上機嫌になりながら言った。
「楽しかったなら何よりですよ。それより、いい人はいましたか?」
「いい人かどうかはまだわからないけど、今度ご飯に行く約束したんだー」
「マジですか。よかったですね」
「うん。葉月はどうなの? この前の男とは」
「いや、だからあれは別に……そう言う恋愛系とは違うし、勘違いしないでください」
怪訝そうに葉月を見ると、「えー。本当に?」と朱里が言った。
「本当です」
「なんだ。面白い話が聞けると思ったのに、残念」
朱里は相変わらずこの手の話が大好きだ。葉月も好きじゃないわけではないけど、自分のこととなると、特にこれと言って何もないのが現状だ。
「葉月も合コン行ってみる? 私セッティングしてあげるよ」
「大丈夫です」
きっぱりと断った葉月に対して、「やっぱりいないとか言いつつ、本当はいるんじゃないの?」と疑い深く朱里が訊いた。
「だから違いますって」
「本当かな」
葉月は朱里の執拗さには少々参っていた。そして弁当の中に入っていた最後のウインナーを手にすると、勢いよく口の中に入れた。
噛みながら弁当の箱を閉めて片付けていると、テーブルの上に置いていたスマートフォンが震えた。
『今日の昼飯は、自分で作ったフルーツサンドです』
翔からラインのメッセージと一緒に、友達と楽しそうにしている写真とフルーツサンド単体の写真が二枚送られてきた。
最近わかったことだが、翔は料理が得意らしい。翔のお母さんが忙しい時は、こうしてたまに翔が自分の昼ご飯を作るそうだ。
『美味しそう! 翔は本当に料理上手だね』葉月は喜んだスタンプをつけて返事をした。
『今度、葉月さんにも食べてもらいたい!』翔も葉月以上に喜び溢れるスタンプをつけてラインを返してきた。
葉月と翔の、姉と弟のような友情関係は良好だった。
葉月はこんな他愛のない会話が心地よくて好きだった。
彼氏とはまた違う、翔と言う弟みたいな存在との関わりが、葉月の心を癒した。
この関係は他の人から見たらどう見えるんだろう。
単純に疑問に思った葉月は、朱里に訊いてみることにした。
「朱里さん、友達の話していいですか?」
朱里に自分の話だと思われないように、葉月は予防線として『友達の話』と言う前置きをした。
「え、何? 気になる。聞かせて」
「突然、今まで顔も知らなかった人から友達になりたいって、男の人にお願いされたらしいんですけど、それって朱里さんどう思います?」
「ええ、ナンパ?」
「やっぱりナンパなんですかね」
「いや知らないけど、単純にその友達がタイプだったんじゃないの?」
「なるほど」葉月は頷いた。
しかし、翔が葉月とそう言う関係になりたいと思って話しかけたとは考えにくい。
例えそうだったとしても、翔のことを弟としか見れない葉月にとっては、複雑な気持ちになるだけだった。
「それ以外に何か理由があると思いますか?」
「ないんじゃない? ほら、男女の友情は成立しないってよく言うじゃん? 好きだからそう言ったんだと思うよ」
「好き……」
「一目惚れだかなんだか知らないけど、結局は彼氏彼女になりたいんじゃないの?」
葉月は自分で朱里に訊いておいて訊かなければよかったと後悔した。今の一緒にいて心地よいと思う翔との関係を壊したくはない。
でも翔が本気なら、人として真剣に向き合う必要がある。
翔は今後何を打ち明けてくるんだろうと思ったら、胸が波打つと同時に、どんなことでも受け止めようと葉月は覚悟を決めた。
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