昔飼ってた犬がイケメン男子高校生になって会いにきた話
週末、葉月と翔は立川市の郊外にある国営昭和記念公園にピクニックに来ていた。
この日は晴天で、暖かな空気が身を包み、身が軽くなるようだった。
まさにピクニック日和と言える。
今は公園の中央付近にある“みんなの原っぱ”にいて、レジャーシートを敷ける最適な場所はないか、探しながら歩いている最中だ。
原っぱのすぐ外側には花や木が生えていて、見ていると心が和んで自然と笑顔になった。
「いい天気ですね」
「そうだねー。翔ってもしかして晴れ男?」
「あ、それよく言われます。体育祭とか、イベントの日に雨になったことは滅多になかったかな」
「やっぱりそうなんだ」
「せっかく今日は葉月さんとピクニックなのに、今日に限って雨を降らせるわけにはいかないですよ」
翔の意味深な発言に一瞬耳を疑った葉月は「いやー。それにしても週末だから混んでるね」と話が聞こえないふりをすることにした。
「ちょっと、何で話を逸らすんですか?」
「人が多いと場所を探すのにも苦労するよね」
相変わらず話が聞こえないふりを続ける葉月に「葉月さん、人の話聞いてます?」と翔が訊くと、「聞こえませんー」と葉月は両耳を手で塞ぎながら言った。
そんな葉月の様子を見て、「聞こえてるじゃん」と翔は呆れたように言った。
しばらく歩いて大きなケヤキの木の下まで来ると、「影あって涼しそうだし、ここにしませんか?」と翔が言った。
「そうだね。もう歩くの疲れたし、ここにしよう」葉月はそう言うと、手に持っていたレジャーシートを芝生の上に敷いた。
すると、翔はそのレジャーシートの上に勢いよく寝転んだ。
「葉月さんも来てくださいよ。ここで寝転ぶと下に芝生があるから、ベッドみたいで気持ちいいですよ」
葉月も最初は抵抗があったが、翔に誘われるがまま勢いよくシートの上に飛び込んだ。
「本当だ。気持ちいい」
「でしょ。俺、もうこのまま寝れそうです」翔はそう言うと目を閉じた。
「寝たら駄目だよ。だってこれからご飯食べたり、バドミントンしたりするって言ったのは翔でしょ?」
葉月にそう言われた翔はすぐに目を開けて、「あ、そうだった」と言った。
翔は起き上がり、リュックの中から可愛い弁当箱をいくつか取り出した。そして蓋を一つずつ開けていくと、中にはくまの顔があるおにぎり、卵焼きやエビフライなどのたくさんのおかずがそれぞれの弁当箱に入っていた。
「すごい! これ全部翔が作ったの?」葉月はその弁当を見て目を輝かせながら言った。
「そうです」翔はドヤ顔で言った。
葉月は翔の弁当のクオリティの高さに圧倒され、「こんなにすごいと私のお弁当見せづらくなっちゃうな」と言った。
「えっ、葉月さんも弁当作ってきてくれたんですか?」
「うん。翔だけに作ってもらうのは悪いなと思って。こんなのでよかったら食べて」そう言うと、葉月はトートバッグの中から弁当を取り出し、蓋を開けた。
中には弁当一面にナポリタンが敷き詰められていた。
「ごめん。私まともに作れるのナポリタンくらいしかなくて」葉月は落ち込みながら言った。
「いや、でもすげえ美味そうですよ」翔は笑顔で言った。
無理に言わせてしまった感じがするが、葉月はその優しさに救われたような気持ちになった。
「それより早く食べません? 俺もう腹減っちゃって」
「そうだね。食べよう」
葉月と翔はそれぞれが作った弁当を手にしてフォークで口に運んだ。
「うまっ、葉月さん。ナポリタン美味いですよ」
「そうかな」
「これ全部食べてもいいですか?」
「うん、いいけど」
その後、翔は本当に一人でナポリタンを全てたいらげた。
翔の弁当も葉月と翔で残さず食べた。
「美味しかった。翔って本当に料理が上手いんだね」
「いやー、それほどでも」翔は片手で髪をくしゃくしゃにしながら言った。
しばらく空白の時間が流れて、翔の顔が突然真剣な表情に変わった。
「葉月さんって、彼氏いないんですか?」
その質問はあまりに唐突すぎて、葉月の心臓がドクンと波打った。
咄嗟に朱里が言っていたことを思い出した。
『彼氏彼女になりたいんじゃないの?』
それを思い出すと、葉月は忘れるために首を横に振った。
「いないけど、何でそんなこと訊くの?」
「気になったんで、ちょっと訊いてみました」
翔は人差し指で自分の頬を触る仕草をした。
葉月は何も言えず黙るだけだった。気まずい空気が葉月と翔の間に流れた。
「あ、バドミントンしませんか?」
気まずい空気に耐えられなくなったのか、突然、翔が葉月に話を切り出した。
そして自分のリュックからラケット二つとシャトルを取り出して、翔は遠くの芝生まで走った。
「葉月さーん、早くやりましょう」翔は遠くから葉月を呼んだ。
仕方なく立ち上がった葉月は翔のいる場所まで歩いた。
翔は葉月が来るまでの間、一人でシャトルをラケットで投げて遊んでいた。
葉月は歩きながら、翔が自分のことをどう思っているのかを考えた。
考えていくうちに、翔が何度も言いかけていたことは、実は告白なのではないかと思うようになった。
今の関係を壊したくないばかりに、葉月は苦渋の表情を浮かべた。
でも、これから翔が何を言ってきたとしても全て受け止めようと決めたばかりだし━━だからもう考えたら駄目だ。
そうは思っても、葉月の頭の中では、『葉月さんって彼氏いないんですか?』と言う翔の質問と『彼氏彼女になりたいんじゃないの?』と言う朱里の言葉が反芻するばかりだった。
☆
この日は晴天で、暖かな空気が身を包み、身が軽くなるようだった。
まさにピクニック日和と言える。
今は公園の中央付近にある“みんなの原っぱ”にいて、レジャーシートを敷ける最適な場所はないか、探しながら歩いている最中だ。
原っぱのすぐ外側には花や木が生えていて、見ていると心が和んで自然と笑顔になった。
「いい天気ですね」
「そうだねー。翔ってもしかして晴れ男?」
「あ、それよく言われます。体育祭とか、イベントの日に雨になったことは滅多になかったかな」
「やっぱりそうなんだ」
「せっかく今日は葉月さんとピクニックなのに、今日に限って雨を降らせるわけにはいかないですよ」
翔の意味深な発言に一瞬耳を疑った葉月は「いやー。それにしても週末だから混んでるね」と話が聞こえないふりをすることにした。
「ちょっと、何で話を逸らすんですか?」
「人が多いと場所を探すのにも苦労するよね」
相変わらず話が聞こえないふりを続ける葉月に「葉月さん、人の話聞いてます?」と翔が訊くと、「聞こえませんー」と葉月は両耳を手で塞ぎながら言った。
そんな葉月の様子を見て、「聞こえてるじゃん」と翔は呆れたように言った。
しばらく歩いて大きなケヤキの木の下まで来ると、「影あって涼しそうだし、ここにしませんか?」と翔が言った。
「そうだね。もう歩くの疲れたし、ここにしよう」葉月はそう言うと、手に持っていたレジャーシートを芝生の上に敷いた。
すると、翔はそのレジャーシートの上に勢いよく寝転んだ。
「葉月さんも来てくださいよ。ここで寝転ぶと下に芝生があるから、ベッドみたいで気持ちいいですよ」
葉月も最初は抵抗があったが、翔に誘われるがまま勢いよくシートの上に飛び込んだ。
「本当だ。気持ちいい」
「でしょ。俺、もうこのまま寝れそうです」翔はそう言うと目を閉じた。
「寝たら駄目だよ。だってこれからご飯食べたり、バドミントンしたりするって言ったのは翔でしょ?」
葉月にそう言われた翔はすぐに目を開けて、「あ、そうだった」と言った。
翔は起き上がり、リュックの中から可愛い弁当箱をいくつか取り出した。そして蓋を一つずつ開けていくと、中にはくまの顔があるおにぎり、卵焼きやエビフライなどのたくさんのおかずがそれぞれの弁当箱に入っていた。
「すごい! これ全部翔が作ったの?」葉月はその弁当を見て目を輝かせながら言った。
「そうです」翔はドヤ顔で言った。
葉月は翔の弁当のクオリティの高さに圧倒され、「こんなにすごいと私のお弁当見せづらくなっちゃうな」と言った。
「えっ、葉月さんも弁当作ってきてくれたんですか?」
「うん。翔だけに作ってもらうのは悪いなと思って。こんなのでよかったら食べて」そう言うと、葉月はトートバッグの中から弁当を取り出し、蓋を開けた。
中には弁当一面にナポリタンが敷き詰められていた。
「ごめん。私まともに作れるのナポリタンくらいしかなくて」葉月は落ち込みながら言った。
「いや、でもすげえ美味そうですよ」翔は笑顔で言った。
無理に言わせてしまった感じがするが、葉月はその優しさに救われたような気持ちになった。
「それより早く食べません? 俺もう腹減っちゃって」
「そうだね。食べよう」
葉月と翔はそれぞれが作った弁当を手にしてフォークで口に運んだ。
「うまっ、葉月さん。ナポリタン美味いですよ」
「そうかな」
「これ全部食べてもいいですか?」
「うん、いいけど」
その後、翔は本当に一人でナポリタンを全てたいらげた。
翔の弁当も葉月と翔で残さず食べた。
「美味しかった。翔って本当に料理が上手いんだね」
「いやー、それほどでも」翔は片手で髪をくしゃくしゃにしながら言った。
しばらく空白の時間が流れて、翔の顔が突然真剣な表情に変わった。
「葉月さんって、彼氏いないんですか?」
その質問はあまりに唐突すぎて、葉月の心臓がドクンと波打った。
咄嗟に朱里が言っていたことを思い出した。
『彼氏彼女になりたいんじゃないの?』
それを思い出すと、葉月は忘れるために首を横に振った。
「いないけど、何でそんなこと訊くの?」
「気になったんで、ちょっと訊いてみました」
翔は人差し指で自分の頬を触る仕草をした。
葉月は何も言えず黙るだけだった。気まずい空気が葉月と翔の間に流れた。
「あ、バドミントンしませんか?」
気まずい空気に耐えられなくなったのか、突然、翔が葉月に話を切り出した。
そして自分のリュックからラケット二つとシャトルを取り出して、翔は遠くの芝生まで走った。
「葉月さーん、早くやりましょう」翔は遠くから葉月を呼んだ。
仕方なく立ち上がった葉月は翔のいる場所まで歩いた。
翔は葉月が来るまでの間、一人でシャトルをラケットで投げて遊んでいた。
葉月は歩きながら、翔が自分のことをどう思っているのかを考えた。
考えていくうちに、翔が何度も言いかけていたことは、実は告白なのではないかと思うようになった。
今の関係を壊したくないばかりに、葉月は苦渋の表情を浮かべた。
でも、これから翔が何を言ってきたとしても全て受け止めようと決めたばかりだし━━だからもう考えたら駄目だ。
そうは思っても、葉月の頭の中では、『葉月さんって彼氏いないんですか?』と言う翔の質問と『彼氏彼女になりたいんじゃないの?』と言う朱里の言葉が反芻するばかりだった。
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