昔飼ってた犬がイケメン男子高校生になって会いにきた話
葉月はストロベリー味のハーゲンダッツを食べながら、ラインのトーク画面を見る。
『もうすぐ着きます!』
翔からそのラインが来てから既に十五分が経っていた。
さすがにもう着いてもいい頃だと思い、『今どこ?』と翔にラインを送った。
中々既読がつかない。
どこかで迷っているのかと不安に思っていると、家のチャイムが鳴った。
モニターに向かうと通話ボタンを押して、「はーい」と葉月は言った。
「あ、俺です」
翔だとわかると、エントランスのオートロックを解除した。
間もなくして再びチャイムが鳴ると、葉月は玄関まで行き、扉を開けて翔を出迎えた。
「遅かったね」
「手ぶらで行くのもいやだったから、すぐそこで手土産買ってました。遅くなってごめんなさい」翔はそう言うと、手に持っていた手土産を葉月に渡した。
葉月は「えっ、ありがとう」とお礼を言って、翔を玄関先からリビングに招いた。
「葉月さんの部屋、整理整頓されてて綺麗ですね」
翔はリビングを見るなり無邪気に言った。
「そうかな」葉月は照れながら言った。
「几帳面ですよね」
「ちゃんとしてないと落ち着かないんだよね」
「葉月さんひょっとしてA型ですか?」
「当たり」
「やっぱりなー」
翔は正解したのが嬉しいのか満足そうにしている。
「座ってて。一緒にケーキ食べよ」葉月がそう言うと、翔はテーブルの前のソファに座る。
葉月はキッチンに行き、翔にもらったケーキを箱から出して皿の上に乗せた。
「葉月さん、あの時はすみません。いきなりあんなこと言って、絶対葉月さん困らせましたよね」翔はキッチンにいる葉月を見ながら言った。
「別にそんなこと気にしなくていいよ」葉月はそう言うと、冷蔵庫から水を取り出し、コップに注いだ。
「でも、誰だってあんなことマジで言われたら、頭おかしい奴だって思うじゃないですか。しかも、しまいにはストーカーだと疑われるし。だから俺、葉月さんに嫌われてないか心配で━━」
翔はかなり落ち込んでいるように見えた。
「そんなこと思ってないよ。最初は確かに驚いたけどね。でも今は翔の言ってたこと、ちょっと信じ始めてる」
「本当ですか?」翔が驚いた顔で訊いた。
「本当だよ」
「でも、あれだけ俺のこと疑ってたのに、どう言う心境の変化ですか? 何かすげえ気になります」何があったのかと言わんばかりに翔は言う。
葉月はキッチンからリビングに移動し、テーブルの上にコップとケーキを置いた後、「よいしょ」と言いながら翔の隣に座った。
「なぜかって言うとね、翔から聞いた話のこと、自分では中々思い出せなかったじゃない? だから、思い切ってお母さんに訊いてみたの」
「葉月さんのお母さんに?」
「うん。そしたら本当に、あった、って言うんだよね。それを聞いた時は本当に驚いた。だって、少なくともそれを知ってるのは、親かハルしかいないはずなんだよ。でも、家族でもない翔が知ってるって言うことは、普通ありえないと思うんだよね。だからそれはつまり━━ハルなんじゃないかって」葉月は隣にいる翔を見据えて言った。
「なるほど。それで俺のこと、少しは信じてくれてるってことなんですよね」翔は感心したように言った。
「そうだね」
「よかったー。俺マジで不安だったんですよ」
「ハハハ。そうだったんだ」
「笑い事じゃないですよ。でも葉月さんに嫌われてなくて本当に良かった」翔は安心した顔で言った。
「うん。ところで、翔のことで確かめたいことがあるんだけど、いいかな」
「何ですか?」
「お母さんが、ハルには左耳の中に星のシミがあったって言ってた。だから、翔の耳の中を見て、本当にあるかどうか確かめたいんだけど、いい?」
葉月は真剣な顔で翔に頼んだ。その真剣さが伝わったのか、翔も真面目な顔つきに変わった。
「わかりました。今の俺にそのシミがあるかどうか正直自信はないですけど、それで葉月さんに信じてもらえるなら、ぜひお願いします」と言うと、翔は左耳が見えるように横を向いて髪を上げた。
まさかこんなにすんなり見せてくれると思わなかった。もっと嫌がるのではないかと予想していたけど、案外素直に見せてくれてよかった。
「じゃあ、遠慮なく」
葉月は翔の前に座り、落ち着くために軽く深呼吸をした。
これで本当に翔の耳の中に星のシミがあったら━━。
そう思うと葉月は緊張して手に汗をかいた。
翔に触れる前に、テーブルの上にあったティッシュで手の汗を拭き、翔の耳に軽く手を置いた。
「じゃあ、見るよ?」
「どうぞ」
「失礼します」
何だかいけないことをしているような気持ちになって、葉月は顔を赤らめた。
いけない、今はただの調査をしているだけなのに、変な気持ちになってどうする。
葉月は頭の中で、これは調査だ、と自分に言い聞かせ気持ちを抑えた。そして胸を高鳴らせながら徐々に顔を近づけていった。
一見すると星のシミがあるようには見えない。
翔の耳は色白で、汚れがほとんどない綺麗な耳だった。耳たぶにはピアスの穴が一つ開いていたが、ピアスは一つもつけていなかった。
「ありました?」耳を見られていることに痺れを切らしたのか翔が葉月に訊いた。
「まだ。ごめんね。もうちょっと待って」葉月は翔を諭すように言った。
耳珠で耳の穴がよく見えなかったため、耳珠を手で優しく押さえた。
耳珠を動かしたら耳の穴がよく見えるようになったため、葉月は翔の耳をよく観察した。
「なんかくすぐったいなー」
「我慢して」
すると、一瞬黒色の点のようなものが一つ見えた。
「これ、もしかして」
「えっ⁉︎ あったんですか?」翔が嬉しそうに言った。
「あ、違う。ごめん。ゴミだった」
それを聞いた翔は、期待を裏切られたように「えー」と言った。
「あれー、どこだろう」
葉月は耳の穴が暗く見えづらかったため、スマートフォンのライトで照らしながら見ることにした。
早速ライトを当てると、耳の中は明るく照らされ、先程より随分見えやすくなった。
葉月がくまなく見ていると、今度は歪な形をした灰色のシミのようなものが見つかった。それは明らかに目立っている。
「えっ、まさか━━」葉月は驚いて思わず声を上げた。
そのまさかだった。目を凝らしてよく見ると、今度こそ本当に、葉月が見たものはゴミでも汚れでもなくシミで、星の形をしていた。
葉月は言葉を失った。やはり翔の言う通り、翔はハルの生まれ変わりだ。
「え? 何か見つかったんですか? またゴミとか言うのだけは勘弁してくださいね」
「違うよ。本当にあったんだよ。今写真撮るから待ってね」葉月はそう言うと、ライトで耳の中を照らしながら写真を撮って翔に見せた。
「本当だ! ある! よかった。これでもう完全に信じてもらえますよね」
翔は正面に向き直り、葉月を見て安心したように笑った。
「本当だったんだね……」葉月はそう言うと、笑っている翔を呆然としながら見た。
母に翔の話を訊いた時点でもう半分は信じてはいたが、ハルと同じ場所に同じシミがあることで葉月はもう百パーセント、翔がハルの生まれ変わりであると言うことを確信した。
「驚きました?」
「そりゃ驚くよ」
見た目は人間だし、姿形は全然違うけど、翔にはハルの記憶がある、そして飼い主のもとにこうしてまた会いに来てくれた。
感動の再会とまではいかなかったけど、葉月は嬉しくてたまらなかった。
「それにしても、何で最初に会った時、私のことを後ろから追いかけて来たの?」
「あれはつい癖で━━自分がハルだった時に、よく葉月さんの後ろを追いかけてたじゃないですか。それが懐かしくて。嬉しくなってつい追いかけちゃいました」
翔は後頭部に手を置きながら照れ笑いをした。
「そう言うことだったんだ。でも私、あの時すごく怖かったんだよー。もう後ろから突然追いかけて来ないでね」葉月は念を押すように言った。
「ごめんなさい。マジで迷惑でしたよね。気をつけます」翔は素直に謝った。
そして葉月はこれまでずっと疑問に思っていた、なぜ葉月を友達にしたのか、と言う問いを翔に直接訊くことにした。
「じゃあ次の質問。何であの時、友達になってくださいなんて言ったの?」
「それはもちろん葉月さんと友達になりたかったからって言うのもありますけど、いきなりハルの生まれ変わりなんだ、なんて言っても多分信じてもらえないと思って。でも友達になったら、言いやすくなるし信じてもらいやすくもなるかもしれない、と思って言いました」
「えー。そうだったんだ」
葉月は拍子抜けした。
ようやく謎が解けてすっきりした感じと、今まであれだけ悩んだのに、と言う後悔をしたような気持ちになった。
「でも、会えて嬉しい」葉月は微笑みながら言った。
「そんな、前世の俺と葉月さんの仲じゃないですか。会いに来るのは当然ですよ」翔はまるで照れ隠しのように言った。
「ハル……。あっ、じゃなかった翔」
「ハハ、別にハルって言ってもいいですよ」
「今の姿でハルって言うと、何か違和感あるから、翔って呼ばせてほしい」
「じゃあお願いします」
正直言うとまだ信じられない気持ちでいる。でも、こう言う夢みたいな話も本当にあるんだな。
どうやら、ハルが死んだあの日に、父と二人で話したことが本当になったようだ。
ハルは翔に生まれ変わって会いに来てくれた。
葉月はハルにまた会えたらいいな、と言う昔からの夢が叶ったようで嬉しかった。
しかし、父のことを思い出すと、どうしてもあの時の光景が、葉月の頭からこびりついて離れないのだった。
☆
『もうすぐ着きます!』
翔からそのラインが来てから既に十五分が経っていた。
さすがにもう着いてもいい頃だと思い、『今どこ?』と翔にラインを送った。
中々既読がつかない。
どこかで迷っているのかと不安に思っていると、家のチャイムが鳴った。
モニターに向かうと通話ボタンを押して、「はーい」と葉月は言った。
「あ、俺です」
翔だとわかると、エントランスのオートロックを解除した。
間もなくして再びチャイムが鳴ると、葉月は玄関まで行き、扉を開けて翔を出迎えた。
「遅かったね」
「手ぶらで行くのもいやだったから、すぐそこで手土産買ってました。遅くなってごめんなさい」翔はそう言うと、手に持っていた手土産を葉月に渡した。
葉月は「えっ、ありがとう」とお礼を言って、翔を玄関先からリビングに招いた。
「葉月さんの部屋、整理整頓されてて綺麗ですね」
翔はリビングを見るなり無邪気に言った。
「そうかな」葉月は照れながら言った。
「几帳面ですよね」
「ちゃんとしてないと落ち着かないんだよね」
「葉月さんひょっとしてA型ですか?」
「当たり」
「やっぱりなー」
翔は正解したのが嬉しいのか満足そうにしている。
「座ってて。一緒にケーキ食べよ」葉月がそう言うと、翔はテーブルの前のソファに座る。
葉月はキッチンに行き、翔にもらったケーキを箱から出して皿の上に乗せた。
「葉月さん、あの時はすみません。いきなりあんなこと言って、絶対葉月さん困らせましたよね」翔はキッチンにいる葉月を見ながら言った。
「別にそんなこと気にしなくていいよ」葉月はそう言うと、冷蔵庫から水を取り出し、コップに注いだ。
「でも、誰だってあんなことマジで言われたら、頭おかしい奴だって思うじゃないですか。しかも、しまいにはストーカーだと疑われるし。だから俺、葉月さんに嫌われてないか心配で━━」
翔はかなり落ち込んでいるように見えた。
「そんなこと思ってないよ。最初は確かに驚いたけどね。でも今は翔の言ってたこと、ちょっと信じ始めてる」
「本当ですか?」翔が驚いた顔で訊いた。
「本当だよ」
「でも、あれだけ俺のこと疑ってたのに、どう言う心境の変化ですか? 何かすげえ気になります」何があったのかと言わんばかりに翔は言う。
葉月はキッチンからリビングに移動し、テーブルの上にコップとケーキを置いた後、「よいしょ」と言いながら翔の隣に座った。
「なぜかって言うとね、翔から聞いた話のこと、自分では中々思い出せなかったじゃない? だから、思い切ってお母さんに訊いてみたの」
「葉月さんのお母さんに?」
「うん。そしたら本当に、あった、って言うんだよね。それを聞いた時は本当に驚いた。だって、少なくともそれを知ってるのは、親かハルしかいないはずなんだよ。でも、家族でもない翔が知ってるって言うことは、普通ありえないと思うんだよね。だからそれはつまり━━ハルなんじゃないかって」葉月は隣にいる翔を見据えて言った。
「なるほど。それで俺のこと、少しは信じてくれてるってことなんですよね」翔は感心したように言った。
「そうだね」
「よかったー。俺マジで不安だったんですよ」
「ハハハ。そうだったんだ」
「笑い事じゃないですよ。でも葉月さんに嫌われてなくて本当に良かった」翔は安心した顔で言った。
「うん。ところで、翔のことで確かめたいことがあるんだけど、いいかな」
「何ですか?」
「お母さんが、ハルには左耳の中に星のシミがあったって言ってた。だから、翔の耳の中を見て、本当にあるかどうか確かめたいんだけど、いい?」
葉月は真剣な顔で翔に頼んだ。その真剣さが伝わったのか、翔も真面目な顔つきに変わった。
「わかりました。今の俺にそのシミがあるかどうか正直自信はないですけど、それで葉月さんに信じてもらえるなら、ぜひお願いします」と言うと、翔は左耳が見えるように横を向いて髪を上げた。
まさかこんなにすんなり見せてくれると思わなかった。もっと嫌がるのではないかと予想していたけど、案外素直に見せてくれてよかった。
「じゃあ、遠慮なく」
葉月は翔の前に座り、落ち着くために軽く深呼吸をした。
これで本当に翔の耳の中に星のシミがあったら━━。
そう思うと葉月は緊張して手に汗をかいた。
翔に触れる前に、テーブルの上にあったティッシュで手の汗を拭き、翔の耳に軽く手を置いた。
「じゃあ、見るよ?」
「どうぞ」
「失礼します」
何だかいけないことをしているような気持ちになって、葉月は顔を赤らめた。
いけない、今はただの調査をしているだけなのに、変な気持ちになってどうする。
葉月は頭の中で、これは調査だ、と自分に言い聞かせ気持ちを抑えた。そして胸を高鳴らせながら徐々に顔を近づけていった。
一見すると星のシミがあるようには見えない。
翔の耳は色白で、汚れがほとんどない綺麗な耳だった。耳たぶにはピアスの穴が一つ開いていたが、ピアスは一つもつけていなかった。
「ありました?」耳を見られていることに痺れを切らしたのか翔が葉月に訊いた。
「まだ。ごめんね。もうちょっと待って」葉月は翔を諭すように言った。
耳珠で耳の穴がよく見えなかったため、耳珠を手で優しく押さえた。
耳珠を動かしたら耳の穴がよく見えるようになったため、葉月は翔の耳をよく観察した。
「なんかくすぐったいなー」
「我慢して」
すると、一瞬黒色の点のようなものが一つ見えた。
「これ、もしかして」
「えっ⁉︎ あったんですか?」翔が嬉しそうに言った。
「あ、違う。ごめん。ゴミだった」
それを聞いた翔は、期待を裏切られたように「えー」と言った。
「あれー、どこだろう」
葉月は耳の穴が暗く見えづらかったため、スマートフォンのライトで照らしながら見ることにした。
早速ライトを当てると、耳の中は明るく照らされ、先程より随分見えやすくなった。
葉月がくまなく見ていると、今度は歪な形をした灰色のシミのようなものが見つかった。それは明らかに目立っている。
「えっ、まさか━━」葉月は驚いて思わず声を上げた。
そのまさかだった。目を凝らしてよく見ると、今度こそ本当に、葉月が見たものはゴミでも汚れでもなくシミで、星の形をしていた。
葉月は言葉を失った。やはり翔の言う通り、翔はハルの生まれ変わりだ。
「え? 何か見つかったんですか? またゴミとか言うのだけは勘弁してくださいね」
「違うよ。本当にあったんだよ。今写真撮るから待ってね」葉月はそう言うと、ライトで耳の中を照らしながら写真を撮って翔に見せた。
「本当だ! ある! よかった。これでもう完全に信じてもらえますよね」
翔は正面に向き直り、葉月を見て安心したように笑った。
「本当だったんだね……」葉月はそう言うと、笑っている翔を呆然としながら見た。
母に翔の話を訊いた時点でもう半分は信じてはいたが、ハルと同じ場所に同じシミがあることで葉月はもう百パーセント、翔がハルの生まれ変わりであると言うことを確信した。
「驚きました?」
「そりゃ驚くよ」
見た目は人間だし、姿形は全然違うけど、翔にはハルの記憶がある、そして飼い主のもとにこうしてまた会いに来てくれた。
感動の再会とまではいかなかったけど、葉月は嬉しくてたまらなかった。
「それにしても、何で最初に会った時、私のことを後ろから追いかけて来たの?」
「あれはつい癖で━━自分がハルだった時に、よく葉月さんの後ろを追いかけてたじゃないですか。それが懐かしくて。嬉しくなってつい追いかけちゃいました」
翔は後頭部に手を置きながら照れ笑いをした。
「そう言うことだったんだ。でも私、あの時すごく怖かったんだよー。もう後ろから突然追いかけて来ないでね」葉月は念を押すように言った。
「ごめんなさい。マジで迷惑でしたよね。気をつけます」翔は素直に謝った。
そして葉月はこれまでずっと疑問に思っていた、なぜ葉月を友達にしたのか、と言う問いを翔に直接訊くことにした。
「じゃあ次の質問。何であの時、友達になってくださいなんて言ったの?」
「それはもちろん葉月さんと友達になりたかったからって言うのもありますけど、いきなりハルの生まれ変わりなんだ、なんて言っても多分信じてもらえないと思って。でも友達になったら、言いやすくなるし信じてもらいやすくもなるかもしれない、と思って言いました」
「えー。そうだったんだ」
葉月は拍子抜けした。
ようやく謎が解けてすっきりした感じと、今まであれだけ悩んだのに、と言う後悔をしたような気持ちになった。
「でも、会えて嬉しい」葉月は微笑みながら言った。
「そんな、前世の俺と葉月さんの仲じゃないですか。会いに来るのは当然ですよ」翔はまるで照れ隠しのように言った。
「ハル……。あっ、じゃなかった翔」
「ハハ、別にハルって言ってもいいですよ」
「今の姿でハルって言うと、何か違和感あるから、翔って呼ばせてほしい」
「じゃあお願いします」
正直言うとまだ信じられない気持ちでいる。でも、こう言う夢みたいな話も本当にあるんだな。
どうやら、ハルが死んだあの日に、父と二人で話したことが本当になったようだ。
ハルは翔に生まれ変わって会いに来てくれた。
葉月はハルにまた会えたらいいな、と言う昔からの夢が叶ったようで嬉しかった。
しかし、父のことを思い出すと、どうしてもあの時の光景が、葉月の頭からこびりついて離れないのだった。
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