昔飼ってた犬がイケメン男子高校生になって会いにきた話
月曜日の朝、会社に着くと、朱里が何やら嬉しそうな顔でスマートフォンを見ていた。
「おはようございます」
「おっはよー」
「朱里さん、そんな嬉しそうな顔して、何かあったんですか?」
「うふふ、聞きたい?」
何だか面倒になりそうな予感がしたため、
「あ、いや、いいです」と葉月は咄嗟に断り、自分の席に座った。
「そんなこと言って、本当は聞きたいんでしょ? いいよ、聞かせてあげる」葉月が断ったにもかかわらず、朱里はこの間の合コン報告の時と同様、上機嫌になりながら言った。
話を聞くところ、どうやら朱里は、この間合コンで知り合った人と何度かデートを重ね、見事お付き合いを開始したらしいのだった。
夜景が見える場所で、ロマンチックなムードの中、相手から告白をされると言う何ともベタなシチュエーションだったと朱里は言う。
それであんなに嬉しそうだったのか、と葉月は納得した。
「よかったですね」
「でしょ? じゃあもっと聞かせてあげる」
その後、朱里の惚気大会が始まった。彼氏がかっこいいだの優しいだの、いくつかの惚気話はしばらくの間止まらなかった。
葉月はその朱里の惚気話を終始うんざりしながら聞いていた。
「それで、何度かデートした後、家に遊びに行ったんだけど、その人犬を飼ってたんだよね。ポメラニアンなんだけど、その子がもうすごく可愛いの」
「へえ、ポメラニアンですか。いいですね」
今まであまり興味のない彼氏の話を話されて困っていた葉月だったが、犬と聞いて初めて興味を持った。
「でしょ? 動画あるんだけど見る?」
「見たいです!」葉月は少々興奮気味に言った。
朱里に動画を見せてもらうと、その犬は賢く、お手、お座り、ターン、スピンなどの芸を披露していた。
「わあ、可愛いですね。それにいろいろ芸もできて賢い」
「ねー。本当に賢いんだよ」朱里は自分の犬でもないのになぜか得意げに言っている。
「そう言えば葉月は、何かペットとか飼ってないの?」
葉月はその時、ハルのことが頭に浮かんだ。
「昔実家で飼ってました。でもそれ以来飼ってないですね」
その飼っていた犬が生まれ変わって自分のところまで会いに来たんですが、と葉月は朱里に言いたくなるのを抑えて心の中で思った。
「そうなんだ。私彼氏の犬が可愛すぎて、自分の家でも飼おうかと思ったくらい」
「その気持ちは分かります。犬は本当に可愛いですよね」
「でしょでしょ。でもなかなかね」
朱里は犬を飼いたそうにしていたが、住んでいるマンションがペット禁止だそうで、飼うには引っ越すしか方法がないようだった。
しかしそこまではしたくないらしく、当分は彼の家に行って可愛がりたいそうだ。
翔はもう犬ではないけど、どことなく犬っぽいところが残っている。
もしかしたらまだお手とか条件反射でやってくれるのではないだろうか、と葉月は考えた。
(今度会ったらやってみよう)
☆
「おはようございます」
「おっはよー」
「朱里さん、そんな嬉しそうな顔して、何かあったんですか?」
「うふふ、聞きたい?」
何だか面倒になりそうな予感がしたため、
「あ、いや、いいです」と葉月は咄嗟に断り、自分の席に座った。
「そんなこと言って、本当は聞きたいんでしょ? いいよ、聞かせてあげる」葉月が断ったにもかかわらず、朱里はこの間の合コン報告の時と同様、上機嫌になりながら言った。
話を聞くところ、どうやら朱里は、この間合コンで知り合った人と何度かデートを重ね、見事お付き合いを開始したらしいのだった。
夜景が見える場所で、ロマンチックなムードの中、相手から告白をされると言う何ともベタなシチュエーションだったと朱里は言う。
それであんなに嬉しそうだったのか、と葉月は納得した。
「よかったですね」
「でしょ? じゃあもっと聞かせてあげる」
その後、朱里の惚気大会が始まった。彼氏がかっこいいだの優しいだの、いくつかの惚気話はしばらくの間止まらなかった。
葉月はその朱里の惚気話を終始うんざりしながら聞いていた。
「それで、何度かデートした後、家に遊びに行ったんだけど、その人犬を飼ってたんだよね。ポメラニアンなんだけど、その子がもうすごく可愛いの」
「へえ、ポメラニアンですか。いいですね」
今まであまり興味のない彼氏の話を話されて困っていた葉月だったが、犬と聞いて初めて興味を持った。
「でしょ? 動画あるんだけど見る?」
「見たいです!」葉月は少々興奮気味に言った。
朱里に動画を見せてもらうと、その犬は賢く、お手、お座り、ターン、スピンなどの芸を披露していた。
「わあ、可愛いですね。それにいろいろ芸もできて賢い」
「ねー。本当に賢いんだよ」朱里は自分の犬でもないのになぜか得意げに言っている。
「そう言えば葉月は、何かペットとか飼ってないの?」
葉月はその時、ハルのことが頭に浮かんだ。
「昔実家で飼ってました。でもそれ以来飼ってないですね」
その飼っていた犬が生まれ変わって自分のところまで会いに来たんですが、と葉月は朱里に言いたくなるのを抑えて心の中で思った。
「そうなんだ。私彼氏の犬が可愛すぎて、自分の家でも飼おうかと思ったくらい」
「その気持ちは分かります。犬は本当に可愛いですよね」
「でしょでしょ。でもなかなかね」
朱里は犬を飼いたそうにしていたが、住んでいるマンションがペット禁止だそうで、飼うには引っ越すしか方法がないようだった。
しかしそこまではしたくないらしく、当分は彼の家に行って可愛がりたいそうだ。
翔はもう犬ではないけど、どことなく犬っぽいところが残っている。
もしかしたらまだお手とか条件反射でやってくれるのではないだろうか、と葉月は考えた。
(今度会ったらやってみよう)
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