昔飼ってた犬がイケメン男子高校生になって会いにきた話
翌朝、葉月は出勤前、自宅でのんびりと朝食を食べながらテレビを見ていた。
見ているのは情報番組で、内容は芸能人の結婚についてだった。コメンテーターが結婚する芸能人について熱心にコメントをしている。
「へー、あの芸能人もいよいよ結婚かー」と、葉月は独り言を呟いた。
しばらく見ていると、ニュースは突然切り替わり、別の芸能人の報道が始まった。葉月はそれを見た途端、朝食を食べる手が止まった。
その報道とは、不倫による謝罪会見についてだった。
せっかくおめでたい報道だったはずが、一気に暗い報道に変わってしまった。
テレビに映っている不倫をした男は、涙ながらに謝罪をしている。まるでその姿は視聴者に許しを請うようだった。
葉月は何だかその報道を見ていると、自分の父のことを嫌でも思い出してしまって気分が悪くなった。
その報道を避けるように別のチャンネルに切り替えると、同じように不倫の謝罪会見が映し出された。
葉月はすぐにまた別のチャンネルに切り替えたが、このチャンネルも同じだった。結局どのチャンネルに回しても同じなため、とうとう葉月はテレビの電源を切った。
「ああ、もう」
葉月は何だかそれがストレスになって頭を抱えた。
父はテレビに出ていた人みたいに謝罪もしていなければ泣いてもいない。自分が不倫をしていることは誰にもばれていないと思っているからだ。
葉月はそのことを父や母に言うつもりはない。父と母が離婚をすることを何よりも恐れているから。
だから父は葉月がなぜ口を利かなくなったのか、母と同様に本当の理由は知らない。
葉月が口を利かなくなった日、父は葉月の機嫌を取ろうと何度も葉月に話しかけてきた。
どうしてそうなったのか、はっきりとした理由がわからないため、初めは困惑したように見えた。
しかし、あまりに長い期間葉月が口を利かないため、父は途中で自分から話すことを諦めたようだった。
四年前、大学受験に合格したのをきっかけに、葉月は山梨から上京した。
一人暮らしを始めてからと言うもの、父と顔を合わせることもなくなった。だからこのまま父とは関わらない、そう心に決めていた。
余程のことがない限りは、家にも帰らないでいいと思っているし、例え帰ったとしても、父のことを許すつもりはない。
それなのに翔は、葉月と父の関係を修復させようとしている。翔は父がやったことを許せると言うのだろうか。
「もう忘れよ、そんなこと」
葉月は皿の上にあった朝食を全て平らげた。そしてコップに入っている水を一口飲んだ。
ふとコップの中の水面をよく見ると、自分の顔が映っていた。
水面の中にいる自分は、いつも見ている自分よりも、何だか悲しそうに見えた。
なぜ自分はこんな悲しそうにしているのだろう。毎日楽しいはずなのに━━。
疑問を感じながらも、コップの中にあった残りの水を全て飲み切り、葉月は家から出る準備をした。
☆
見ているのは情報番組で、内容は芸能人の結婚についてだった。コメンテーターが結婚する芸能人について熱心にコメントをしている。
「へー、あの芸能人もいよいよ結婚かー」と、葉月は独り言を呟いた。
しばらく見ていると、ニュースは突然切り替わり、別の芸能人の報道が始まった。葉月はそれを見た途端、朝食を食べる手が止まった。
その報道とは、不倫による謝罪会見についてだった。
せっかくおめでたい報道だったはずが、一気に暗い報道に変わってしまった。
テレビに映っている不倫をした男は、涙ながらに謝罪をしている。まるでその姿は視聴者に許しを請うようだった。
葉月は何だかその報道を見ていると、自分の父のことを嫌でも思い出してしまって気分が悪くなった。
その報道を避けるように別のチャンネルに切り替えると、同じように不倫の謝罪会見が映し出された。
葉月はすぐにまた別のチャンネルに切り替えたが、このチャンネルも同じだった。結局どのチャンネルに回しても同じなため、とうとう葉月はテレビの電源を切った。
「ああ、もう」
葉月は何だかそれがストレスになって頭を抱えた。
父はテレビに出ていた人みたいに謝罪もしていなければ泣いてもいない。自分が不倫をしていることは誰にもばれていないと思っているからだ。
葉月はそのことを父や母に言うつもりはない。父と母が離婚をすることを何よりも恐れているから。
だから父は葉月がなぜ口を利かなくなったのか、母と同様に本当の理由は知らない。
葉月が口を利かなくなった日、父は葉月の機嫌を取ろうと何度も葉月に話しかけてきた。
どうしてそうなったのか、はっきりとした理由がわからないため、初めは困惑したように見えた。
しかし、あまりに長い期間葉月が口を利かないため、父は途中で自分から話すことを諦めたようだった。
四年前、大学受験に合格したのをきっかけに、葉月は山梨から上京した。
一人暮らしを始めてからと言うもの、父と顔を合わせることもなくなった。だからこのまま父とは関わらない、そう心に決めていた。
余程のことがない限りは、家にも帰らないでいいと思っているし、例え帰ったとしても、父のことを許すつもりはない。
それなのに翔は、葉月と父の関係を修復させようとしている。翔は父がやったことを許せると言うのだろうか。
「もう忘れよ、そんなこと」
葉月は皿の上にあった朝食を全て平らげた。そしてコップに入っている水を一口飲んだ。
ふとコップの中の水面をよく見ると、自分の顔が映っていた。
水面の中にいる自分は、いつも見ている自分よりも、何だか悲しそうに見えた。
なぜ自分はこんな悲しそうにしているのだろう。毎日楽しいはずなのに━━。
疑問を感じながらも、コップの中にあった残りの水を全て飲み切り、葉月は家から出る準備をした。
☆